2006年07月22日

セファリックは踊る暗い腹の中踊る

4061824880少女は踊る暗い腹の中踊る
岡崎 隼人
講談社 2006-06-07




内容(「BOOK」データベースより)
連続乳児誘拐事件に震撼する岡山市内で、コインランドリー管理の仕事をしながら、無為な日々を消化する北原結平・19歳。自らが犯した過去の“罪”に囚われ続け、後悔に塗れていた。だが、深夜のコンビニで出会ったセーラー服の少女・蒼以によって、孤独な日常が一変する。正体不明のシリアルキラー“ウサガワ”の出現。過去の出来事のフラッシュバック。暴走する感情。溢れ出す抑圧。一連の事件の奥に潜む更なる闇。結平も蒼以もあなたも、もう後戻りはできない!!第34回メフィスト賞受賞!子供たちのダークサイドを抉る青春ノワールの進化型デビュー。


第34回のメフィスト賞受賞作です。

小生、あんまりメフィスト賞の作品は読んでないんですけど、ジュンク堂の宣伝コピーで、この作者を「乙一×エルロイ÷夢野久作=岡崎隼人」みたいな感じで形容していて、乙一の部分にキョーレツに惹かれてちょっと興味が出たので読んでみました。

で、読んでみると、ぜんぜん乙一じゃない。
まぁー、そこはかとなく感じられなくもないけどこれはぜんぜん乙一じゃない。
むしろ舞城だ。
これは間違いなく舞城王太郎だ。
誰が読んでも、百人が百人、この作品から舞城を感じ取るに違いない。
というぐらい舞城でした。

ジュンク堂のコピーに出てきた3人の作家は、作中で主人公が少女に買ってあげる本の作者なだけ。
ジュンク堂はもっとマシな式を考えろ!ってな感じでした。

作品自体は悪くなかったですよ。
舞城王太郎は小生すきですし。
ただ、この作品が好きかどうか問われると首を傾げざるをえませんが。
まぁ、なんと言うか、まだ幼い子どものいるお父さんとかお母さんとか、ほんとにいるのかは知りませんけど、世界は明るいものだとまだ信じきっている純粋なお子様なんかにはとてもじゃないけど読ませられません。
オビに「青春ノワール」と書いているだけあって、黒く、そして暗いです。

そこが岡崎隼人と舞城王太郎の大きな違いです。

舞台が地方であること。
会話分にそこの方言が多用されていること。
かなりバイオレンスなところ。
この2人の作家の共通点を挙げていけばかなりの要素を挙げられます。

ただ、決定的に違うのは舞城の文体が狂いに狂っているのに対して、岡崎の文体は理性的に狂っているところです。
舞城の文章は狂いに狂っているがゆえに圧倒的なグルーヴ感というか、疾走感があります。
だから、いかに激烈なバイオレンスがあっても、何か突き抜けているというか、極端に表現すると「青空」が感じられます。
一方で、岡崎は狂っているけど舞城のようなグルーヴ感はない。
あるのは冷静なまでの陰惨さです。
そこに見えるのは「どんよりとした曇り空」、もしくは「まったくの闇夜」といった方がいいでしょうか。
舞城が昼なのに対して、岡崎は「夜」です。
舞城は勢いに任せてバイオレンスですが、岡崎は落ち着いてバイオレンスです。

だからなのかもしれませんが、この作品はストーリーは結構しっかりしています。
ミステリとしても悪くない出来です。
舞城の「煙か土か食い物か」みたいに無茶苦茶ではありません。

この作品の帯にあったコピーの「青春ノワール」のうち、ノワールはいいんですが、青春があんまりグッとこなかったのが残念でした。
なくしたものを取り戻したい気持ちは分かるけど、小生にはちょっと感情移入は出来ず、「青春」の部分ではこの作品はあんまり評価できませんでした。

この作品はどうしても舞城と比べてしまうので、本当のオリジナルと呼べるような作品を読んでみたくなる作家でした。

それにしても、この作品を久しぶりに晴れた土曜日の朝から読んでしまったのはやっぱりミスだったかなぁ。
タグ:読書
posted by Aorta at 18:10| Comment(0) | TrackBack(1) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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(書評)少女は踊る暗い腹の中踊る
Excerpt: 著者:岡崎隼人 連続乳児誘拐事件に揺れる岡山市。コインランドリー管理の仕事をしな
Weblog: たこの感想文
Tracked: 2006-08-02 16:13
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