2006年01月14日

山ん中のセファリック

今日2回目の書評です。
今回は・・・
舞城王太郎『山ん中の獅見朋成雄』

これを読むのは今回で確か3回目です。
新書版で先月発売されたので買って読んでみました。
3回目読んでもやっぱり面白いです。
舞城作品の中では1,2を争う小生の好きな作品です。
ちなみにこれと1位を争っているのは『熊の場所』です。
両者とも、過激な舞城作品にしてはバイオレンスが少なめ(あくまでも少なめです。決してないわけではありません。他の穏やかな作家さんの話に比べれば多いくらいです)で、読みやすいです。
まさに、舞城作品への入門といった感じです。

で、話の内容ですが、主人公は背中に馬みたいな鬣(たてがみ)を持つ中学生の獅見朋成雄(シミトモナルオ)です。
彼はオリンピックに誘われるほどの足の速さの持ち主なのですが、それを蹴って近所に住む変人の書家、杉美圃大寛(すぎみほたいかん、通称モヒ寛)に書を習い始めます。
そんなある日、モヒ寛が家の裏山で大怪我をして・・・というところから物語は急展開を始めます。
舞城独特の語り口と、物語のファンタジー性が絶妙にマッチしていい味を出しています。
ファンタジー性と言っても、これはおとぎ話っぽいと言うことではありません。
ある意味おとぎ話なのですが、どっちかというと非現実性といった方がいいかもしれません。

阿修羅ガールの森の描写でも少し思いましたが、舞城氏は『となりのトトロ』が好きなんでしょうか?
『山ん中の・・・』でも、森のトンネルを抜けて秘密の集落にたどり着く場面があります。
思いっきりトトロのイメージじゃないかと小生思うのですが。

あと、この物語を大きく印象付けるのが擬音語です。
墨を磨る音、かみそりが肌をなでる音。
まさに舞城ワールド炸裂といった感じです。

ここまでいろいろ書いてきましたが、実は小生、この物語の大きなテーマについてまだ何も触れていません。
基本的には、成雄君の成長というか、自分とは何かみたいなものがテーマだと思うのですが、別に小生が触れていない大きな要素があります。
ここで小生がそれについていろいろ書いて先入観を植え付けてしまっても興ざめなので、何も書きません。
興味のある人は自分で読んでみましょう。

4061824678山ん中の獅見朋成雄
舞城 王太郎
講談社 2005-12




4061824074熊の場所
舞城 王太郎
講談社 2004-12-07




4101186316阿修羅ガール
舞城 王太郎
新潮社 2005-04




今年読了した本:11冊

ただ、やっぱりちょっと書いておきたいことがあるので隠して書いておきますね。
すでに読んだことがある人、もしくはまったく読む気がない人は別に読んでもおっけーですよー。
小生思ったのは、盆とはジェットコースターに似てるんじゃないかなーと。
モヒ寛が「盆はタブー(あえてどんなタブー化は言いません)を冒すスリルを楽しむための装置だ」みたいなことを言っていましたが、小生の考えではジェットコースターも同じように「死を疑似体験するスリルを楽しむための装置」なのです。
うん、なんとなく似てますね。
ジェットコースターがいかに好きな人でも、死を実際に体験するために自殺することはないでしょう。
バンジージャンプやら、夜中に車を猛スピードで走らせたり何やらでごまかすわけです。
そう考えてみると、やはり西川壕が人盆について言っていることは違うんじゃないかなーと小生思うわけです。
彼は究極を追求しているわけですが、究極というものはいくら近づいても到達はできないものであるわけで、やはり人盆ではなく、別の何かで人盆に究極的に近づくことがあるべき西川壕の目的ではないかと。

まっ、そんなことを小生は考えたわけです。
結構まともなことを言ってしまいました。
未読のままここまで読んでしまった人はさっぱり何のことかわからないでしょう。
そんな人はぜひAmazonで買って読みましょう。
小生の懐も暖かくなって一石二鳥です。
posted by Aorta at 23:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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